検証 ・ 国土地理院の公開写真と無料のソフトだけで ・ 2026-10-01
戦後まもなく米軍が撮った航空写真から、土地の起伏を表す立体地図(赤色立体図・CS 立体図)を作れるかを試しました。使ったのは、国土地理院が無料で公開している写真とデータ、無料のソフトだけです。東京と水戸の 2 か所で試し、東京では作れ、水戸では作れませんでした。
東京 中目黒〜目黒(1948 年)
米軍が 1948 年 7 月 26 日に撮った写真 6 枚(縮尺 約 1/1 万)から作りました。1963 年(自前)・1965 年・現在と、同じ範囲・同じ計算で並べています。範囲は約 3.4 km × 2.5 km です。


左側
右側
1948 年は参考:写真 6 枚からの推定・継ぎ目あり・高さの誤差 約 3 m。継ぎ目と縁の乱れが目立つ所(写真の縁から約 120 m)は切り落としています。
読み取れたもの・読み取れなかったもの
- 1目黒川とみられる線今の図では点々が並ぶ線(川に架かる橋とみられる)。1948 年にも同じ向き・同じ位置に暗い線が出ている。
- 2目黒川の谷の東側の崖1948 年でもはっきり読める。今の図の崖とほぼ重なる。
- 3山手線とみられる直線(恵比寿〜目黒)1948 年にも同じ所に長い直線が出ている。すぐ東の大きな建物群は、今の恵比寿ガーデンプレイスの場所(当時はビール工場)。
- 4西から入る谷左端から入る谷の縁。1948 年も同じ形に曲がって見える。
- 5四角い区画の段差1948 年と今で、ほぼ同じ位置と大きさ。
- 6写真の継ぎ目(読み取れなかったもの)写真どうしの境目に縦の筋が出る。
- 7まだらな雑音(読み取れなかったもの)建物ほどの大きさの凹凸が全体に出ていて、細かい形は読めない。
水戸 水戸南飛行場跡(1946 年)
米軍が 1946 年 6 月 7 日に撮った写真 8 枚(縮尺 約 1/4 万)から、同じ手順で作りました。1967 年と現在の地形(国土地理院)と並べています。範囲は約 2.6 km × 3.1 km です。


左側
右側
1946 年は失敗例:写真 8 枚から作りましたが、地形は読み取れません。最初は 4 枚で作り、8 枚に増やしても変わりませんでした。
見比べてわかること
- 1946 年の図は全面が細かい斑点です。写真の粗さから出た雑音とみられ、地形ではありません。
- 1967 年の図では林の塊が浮き出て、畑の広がりは平らに見えます。1946 年の図では、この区別がつきません。
- 現在の図の斜めの帯は、あとからできた高速道路の盛土です。
- 写真では、1946 年の飛行場の広い平地と、その後の畑・住宅への移り変わりが見られます。
失敗と成功の傾向
成功と失敗は、写真の縮尺と、その土地の起伏の大きさで分かれました。
成功の傾向
東京 中目黒〜目黒1948 年 7 月 ・ 縮尺 約 1/1 万 ・ 写真 6 枚- 縮尺 1/1 万前後の写真なら、高低差が 10 m を超えるような谷や崖は読み取れます。
- 目黒川の谷や崖など主な地形が、今の地図と同じ位置に読み取れました。細かい形は雑音に埋もれます。
- 写真の位置合わせには、同じ時代の写真のオルソ画像が役に立ちました。東京では、時代の違うオルソ画像では合いませんでした。
失敗の傾向
水戸 水戸南飛行場跡1946 年 6 月 ・ 縮尺 約 1/4 万 ・ 写真 8 枚- 縮尺 1/4 万の写真では、起伏が数 m の平らな台地は雑音に埋もれます。写真の枚数を増やしても変わりませんでした。
- 図の全面が細かい斑点になり、1967 年の図に出ている林の塊や、平らな畑の広がりも区別できませんでした。
- 有料の高解像度の写真を使えば、水戸の結果が変わる可能性はありますが、試していません。
なぜ差が出たか
| 東京 | 水戸 | |
|---|---|---|
| 撮影 | 1948 年 7 月 26 日 | 1946 年 6 月 7 日 |
| 縮尺 | 約 1/1 万 | 約 1/4 万 |
| 写真の 1 画素の地上の大きさ | 約 0.6 m | 約 2.5 m |
| 使った写真 | 6 枚 | 8 枚 |
| できた地形の高さのばらつき | 約 3.2 m | 約 2.7 m |
| 土地の起伏(250 m 四方の高低差の中央値) | 13.3 m | 2.4 m |
| 結果 | 主な谷や崖が読める | 雑音に埋もれる |
できた地形の誤差は、どちらも 3 m 前後で同じくらいでした。違いは土地の起伏です。東京は 250 m の範囲で 13 m ほどの高低差があり、誤差の 4 倍あります。水戸の台地は 2〜3 m しかなく、誤差と同じくらいなので、地形が雑音に埋もれました。写真の縮尺も、東京の方が 4 倍細かい写真でした。
高さのばらつきは、木や建物の少ない開けた所で比べた値です。比べた相手は、東京は今の標高、水戸は 1967 年の地形です。起伏は、どちらも今の標高タイル(5 m)から同じ計算で出しました。
使ったもの(すべて無料)
- 航空写真
- 国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」の米軍撮影の写真。400 dpi の画像を無料でダウンロードできます。
- 位置合わせ
- 近い時代の写真のオルソ画像(国土地理院)。東京は 1945〜1950 年の写真の地理院タイルを使いました。
- 高さの基準
- 国土地理院の標高タイル(現在)
- 比べる地形
- 国土地理院「過去の地形データ」(東京 1965 年・水戸 1967 年)と、標高タイル(現在)
- 地形を作るソフト
- OpenDroneMap(無料のオープンソースのソフト)
- 図の描き方
- MPI 赤色立体図と CS 立体図。公開されている方法で自前に計算しました。
- かかったお金
- 0 円(手元のパソコンで計算)
有料の高解像度の写真(日本地図センターで、国土地理院の写真は 1 枚 4,539 円)は使っていません。